« 『みなとみらい起業家交流会』報告(^^) | Main | オクトーバーフェスティバル(in日比谷公園) »

September 23, 2005

税務行政への提言・・・

 2005年8月25日朝日新聞紙上に、税務署OB税理士への顧問先あっせん制度を廃止すべしとの投稿記事が記載された。
税務署OBである税理士(国税局や税務署に23年以上勤務すれば、所定の研修を受けるだけで無試験で税理士になれる)は、税務署退官後、所轄税務署より顧問先企業のあっせんを受ける制度がある。顧問先のあっせんを受けるのは、国税当局の局長や部長、税務署長や副所長などの職位で退職したOB税理士である。当局は、彼らは通常、定年2年前に早期退職を勧奨されるため、その2年間分の収入確保のために顧問先をあっせんするのが慣行であると説明する。
 国税当局が、OB税理士に対し顧問先企業をあっせんする事に対し、世論は「国税当局とOB税理士の間に癒着があるのではないか」、「国税当局がOB税理士の顧問企業をあっせんすべきではない」と批判的である。
 民間からしてみると、国税当局がOBとなる税理士に対し、顧問先企業をあっせんする行為は、単にそれだけの事実で、顧問先となる企業に対し調査に対し手心が加えられるのではないかと勘ぐるのは当然である。また、二階建てという言葉もある。これは、すでに顧問税理士がついている企業に対しても、当局がOB税理士をあっせんことをいう。あっせんの依頼を受けた企業は、断ると税務当局からなんらかの報復行為があるのではないかとの圧力から、OB税理士を受け入れる。しかし、これまでの顧問税理士に失態があった訳でもなく特別な理由もないまま顧問を断れない。結果として、両方とも断れずに、2人の税理士を顧問税理士として抱え込んでしまう事になる。このとき実際に入力代行、税務申告書の作成等の実務作業は、これまでの税理士が行う事が多く、あっせんで後から入ってきたOB税理士は何もせずに毎月顧問料だけもらっているケースが多い。1階を既存税理士、2階をOB税理士とし、これが二階建てと言われる所以である。
 百歩譲って、OB税理士へのあっせんシステムを認めるとしても、すでに顧問税理士がついている企業に対してもあっせんを行う行為は容易には認容できないであろう。民間の税理士が大変な苦労をして開拓した顧問先を、税務署の圧力で簡単に持って行かれる事は到底納得のできるものではない。
 申告書に署名捺印するのであるから、税務署は、どこの企業にどの税理士が顧問としてついているか把握している。にもかかわらず、平然と横やりを入れてくるのである。官による民業圧迫の悪例であるといえよう。
 ただ、顧問先企業が、税務当局の圧力に屈し、OB税理士を受け入れた場合、それを強引に妨げる事は事実上不可能であろう。当事者である顧問企業が、企業自らの意思決定によりOB税理士を選択したと言われれば、非OB税理士としてはそれ以上もうどうしようもないからである。
 当局によるあっせんが、顧問税理士がない企業であって、さらに記帳指導等のニーズがある企業に対し、OB税理士をあっせんするというのであれば、まだ理解の範囲である。しかし、実際にはすでに顧問税理士がついている企業に対してあっせんが行われている。

 全国の国税局から受けたあっせんの実態は、平成15年にはOB税理士336人に顧問先企業4,132社をあっせんし、1人当たり年間平均顧問料920万円(年間収入総額は31億円)、1人当たりの平均企業数は12.3社、1人当たりの平均月額報酬の額は、76.7万円。
 平成16年はOB税理士331人に、あっせん企業3,938社、1人当たり年間平均顧問料880万円(年間収入総額29億円)、1人当たりの平均企業数は11.9社、1人当たりの平均月額報酬の額は73.4万円に上った。
 これを元に分析すると、毎月の顧問料は約5万円と推定される。
 月額5万円の顧問料が取れる企業は多くはない。税理士業界における競争はすでに激化してきており激烈な価格競争にさらされている。記帳代行、税務顧問の報酬は、最安値は月額1万円から1万円を切る価格まで下がってきているのが実態である。

 平成14年の国会答弁において、OB税理士へのあっせんの実態について、
「税理士資格を有する職員に対する退職後の顧問先企業のあっせんは、現在も行っている。
 これは、職員の在職中の職務の適正な執行を確保する等の観点から、必要に応じ行っているものであり、民間の需要に対する的確な対応等の面でも有益であるので、今後とも必要であると考えている。なお、このようなあっせんは違法ではないとしても、誤解や疑念を招きかねないとの指摘があることを踏まえ、そのような誤解等を避ける観点から、これまで行ってきた税務署の副署長、国税局の調査管理課長等によるあっせんの補助は廃止し、国税局の人事課職員のみで対応しているところである。」
 また、ある企業は、税務当局から、契約の挨拶に訪れた後、一度も訪問指導していない国税OB税理士に毎月5万円の報酬を支払っていることに対して、税務上疑義があると指摘されたと聞くが、国税当局がなぜ税務上問題のあるあっせんを続けるのかに対し、
「一般に、税理士、弁護士等との顧問契約は、役務提供の内容が具体的に定められている場合を除き、その顧問契約期間において、企業がその税理士、弁護士等に対しいつでも必要に応じて相談等を行うことができるというものであり、結果として、仮にその顧問契約期間中に企業がその税理士、弁護士等に相談等を行うことがなかったとしても、その顧問料等は、その事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入される。御指摘のように企業への訪問指導が行われていないことのみをもって税務上疑義があるとは言えない。
 税理士資格を有する職員に対する退職後の顧問先企業のあっせんは、職員の在職中の職務の適正な執行を確保する等の観点から、必要に応じ行っているものであり、民間の需要に対する的確な対応等の面でも有益であるので、今後とも必要であると考えている。」と答弁している。
 平成16年の国会答弁においては、退職勧奨の一環として人事課が行っている顧問先のあっせんは、退職時のことであり、退職してから数年経過した後は、民間人である方が何をされるかについて当局は関与できない。ただ、問題がなかった訳ではないので(元札幌国税局長OB税理士脱税事件等のことを指しているものと思われる)顧問先のあっせんについては、疑惑を招かないよう、現場の副署長等による接触を廃止し、人事担当者が一元的に企業側のニーズを確認する方法に変えた」と答弁している。

 OB税理士への顧問先企業あっせん制度は、形を変えた中央省庁幹部への民間への天下りであることは誰の目にも明白である。政府が、聖域なき行政改革を推し進めるのであれば、是が非でも、この聖域にもメスを入れなければならない。このまま、国税当局によるOB税理士への顧問先企業のあっせんを続ける事は、国税当局への信頼を揺るがす事に他ならない。税務行政は、国の根幹を統べるものであり、その信頼を保つためにも、この悪しき慣行を是正すべきと考える。

|

« 『みなとみらい起業家交流会』報告(^^) | Main | オクトーバーフェスティバル(in日比谷公園) »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/58951/6072440

Listed below are links to weblogs that reference 税務行政への提言・・・:

« 『みなとみらい起業家交流会』報告(^^) | Main | オクトーバーフェスティバル(in日比谷公園) »